道路の、
舗装工事をしていた、飯場から、
盗んで来た缶入りアルファルトは、
僕の宝物だった。
親父の車から、
取外したバッテリーの電極を溶かし、
拳大の固まりにした、
鉛も宝物だった。
事故現場で砕け散った、
フロントガラスの欠片を拾った。
級友の誕生会に招かれ、
贈り物も用意出来ない僕は、
件のガラスを、
宝物のダイヤモンドだと言って、
テーブルに撒いた。
高級婦人を自認していた、
友人の母親は、
目の色を変えて手に取った。
...浅ましいモノを見てしまった。
得意気に出して来た、
人生初の蒸しプリンも不味かった。
二度と誕生会に、
招かれる事は無かった。