婆ちゃんが目覚めなかった朝の事を思い出す。
学校から帰ると、今日こそは目が覚めてい
ると思い、真っ先に見に行ったが眠ったま
まだった。
こんな日が1週間位続いたある日、
往診に来た看護婦と親父の会話を聞いた。
看護婦は酸素吸入を続けるかどうかの判断を
親父に迫っていた。
金が無いから、親父の返事は予想できたが、
看護婦の言葉に、言い訳を見出そうとして
いる親父の姿が情けなかった。
僕は大反対だったが、無力なので成り行きを
見守るしかなかった。
この日を境に、荒れに荒れた。
何か特別悪い事をした訳ではないが、誰も
近寄り難い雰囲気を身にまとった。
卒業式が近付いて、僕を表彰するかどうかで
職員会議が紛糾したと聞いた。
最終的には、僕がナイフを持ち歩いていると
言う話が伝わり、表彰は取り止められた。
僕に取っては、どうでも良い話だった。
既に僕は、婆ちゃんや親父、そして生母が旅
立った歳を越えた。
今日まで、婆ちゃんに胸を張れる様な生き方
をして来なかったが、この思いから卒業出
来る日が来るのだろうか。
字が書けなかった婆ちゃんに、カタカナを教
えた。自分の名前が書ける様になったら、
モーヨカと言って字の勉強を卒業した。
僕の、根性無しは婆ちゃん譲りだと思う。