僕が絵を描く事が好きだと思った婆ちゃんは、
年金で絵画教室に入講させた。
1時間位いたら嫌になった。
教えられたのは、絵を描く事では無く、
絵を紙に描く作画作業だけだった。
ジジイの偉そうな講釈も気に食わなかった。
ギフテットには、無心で絵を描く人が多い。
普通の人達は、絵を描く事が好きなんだと
勘違いする。
好きなのは、頭を空っぽにして作画の作業に、
没頭する事で有って、絵を描く事では無い。
頭の中の絵は、空想で勝手に生まれて来る。
それを一々作画するのは苦痛でしかない。
もう行きたくないと言ったら、婆ちゃんは、
淋しそうな顔をしたけど許してくれた。
僕を喜ばせたくて、30分以上かかる道を、
手を引いて連れて行ってくれた。
辱をかかせない様に絵具と筆も買ってくれた。
服も、一着しかない他所行きを着せてくれた。
毎回、裏切る様な事しか出来ない自分を、
恨めしく思った。