毎朝、婆ちゃんに背負われ、
大きな銀杏(イチョウ)の木の下に有る、
保育園に通っていた。
2歳保育と呼ばれていた頃だったので、
一人では遠くて行けなかったのだろう。
その日は、親父が初めて買ってくれた、
ブリキの小さな飛行機を、
婆ちゃんの背中でブンブン飛ばしていた。
保育園に着くと、
先生(保母さん?)が預かって置くと言っ
て、飛行機は取り上げられた。
早く飛行機で遊びたくて園が終わるのが、
待ち遠しかった。
帰りの時間になって、
ボロボロになった飛行機を返された。
先生は何か言い訳をしていたが、
全く耳に入って来なかった。
何が起きたか分からず、
泣く事さえ出来なかった。
親父が悲しむと思って、
飛行機はカバンに隠し何が有ったか、
婆ちゃんにも親父にも話さなかった。
二人がヒソヒソ話をしているのを聞いて、
先生が謝りに来た事を知った。
親父が玩具を買ってくれたのは、
これが最初で最後だった。
岡林信康さんの、
チューリップのアップリケをギターで唄う度、
「みんな貧乏が、みんな貧乏が悪いんや...」
の歌詞は、涙がにじみ声が出なくなる。
生母が脊髄カリエスを患った事が、
親父との離婚の理由だった。
生母が、下の叔母の旦那に援助を頼んだ時、
治らない病気に金をかけてもしょうがない
と、断られたらしい。
その旦那の葬儀には生母を連れて参列した。
#岡林信康さん 7月22日 蟹座 水